どうして、こんなにイライラするんだろう?」
「悲しい気持ちをどうしたらいい?」
「不安にならないようにしたい」
私たちは、毎日の暮らしの中でさまざまな感情を経験しています。
うれしい、楽しい、安心する。
一方で、悲しい、不安、怒り、寂しい、悔しい……。
できれば感じたくないと思う感情もあるかもしれません。
そんなとき、
「もっと前向きにならなければ」
「怒らないようにしなければ」
「不安になってはいけない」
と、自分の感情を変えようとすることがあります。
でも、感情は「なくせばいいもの」なのでしょうか。
この記事では、心理学の知見を参考にしながら、感情とは何なのか、なぜ感情が生まれるのか、そして感情とどのように付き合っていけばよいのかを一緒に考えてみます。
感情とは何だろう?
まず、「感情」とは何でしょうか。
私たちは普段、
「うれしい」
「悲しい」
「怖い」
「腹が立つ」
「楽しい」
など、さまざまな言葉で自分の気持ちを表現します。
心理学では、感情についてさまざまな考え方や研究があります。
感情をどのように定義するか、どのように分類するかについても、研究者によって考え方が異なります。
そのため、
「感情とはこれだけのもの」と一つの説明だけで決めることはできません。
ただ、私たちの日常生活では、感情を
「自分の中で起きている変化に気づくための手がかり」
として考えてみることができます。
たとえば、誰かに褒められたときに「うれしい」と感じる。
大切な予定がうまくいかなかったときに「悲しい」と感じる。
危険を感じたときに「怖い」と感じる。
自分の大切なものを傷つけられたと感じたときに「怒り」を感じる。
このように、感情は私たちの日常生活の中でさまざまな形で経験されています。
感情には「良い感情」と「悪い感情」がある?
感情について考えるとき、
「うれしい気持ちは良い」
「怒りや悲しみは悪い」
というように分けたくなることがあります。
でも、感情そのものを簡単に「良い・悪い」と分けることはできません。
たとえば、怒りを感じること自体は、人間にとって自然な感情の一つです。
悲しみや不安も、私たちが生活する中で経験する感情です。
もちろん、どのような感情を感じたとしても、どんな行動をしてもよいという意味ではありません。
たとえば、
「怒りを感じた」
ことと、
「怒りにまかせて相手を傷つけた」
ことは別のものです。
ここで大切なのは、
感情と行動は同じではない
ということです。
感情を感じること自体を責めるのではなく、その感情を感じたうえで、どのように行動するかを考えることができます。
感情は自分の状態を考える手がかりになる
感情は、自分の状態について考えるための手がかりになることがあります。
たとえば、
「なんだかイライラする」
と感じたとします。
そこで、
「自分は短気だからダメだ」
と決めつけるのではなく、
「何があったんだろう?」
と少し振り返ってみます。
仕事が思ったように進まなかった。
誰かの言葉に傷ついた。
疲れていた。
自分の意見を聞いてもらえなかった。
このように、いくつか思い当たることがあるかもしれません。
もちろん、一つの感情に一つの原因があるとは限りません。
そのため、
「怒っているから、原因は必ずこれだ」
と決めつける必要もありません。
「この気持ちには、何が関係しているのかな?」
と考えてみることが、自分の状態を知るきっかけになります。
同じ出来事でも、感じる感情は違う
同じ出来事を経験しても、人によって感じることが違う場合があります。
たとえば、職場で上司から、
「この仕事、もう少し修正してください」
と言われたとします。
ある人は、
「教えてもらえてよかった」
と感じるかもしれません。
別の人は、
「自分の仕事を否定されたような気がする」
と感じるかもしれません。
また別の人は、
「また注意された。嫌だな」
と感じるかもしれません。
同じ言葉を聞いても、感じ方が違うことがあります。
そこには、その人の経験や考え方、そのときの体調、相手との関係、その場の状況など、さまざまなことが関係している可能性があります。
だから、
「どうして自分はこんなことで気にするんだろう」
と、自分を責める必要はありません。
まずは、
「私はこの出来事を経験して、どんな気持ちになったんだろう?」
と振り返ってみることができます。
感情と考えは関係している
感情は、考えと関係していることもあります。
たとえば、友人からの返信が来ないとします。
「忙しいだけかもしれない」
と思えば、それほど不安にならないかもしれません。
一方で、
「嫌われたのかもしれない」
と考えると、不安や寂しさを感じるかもしれません。
実際に友人がなぜ返信しないのかは、その時点では分かりません。
ここで大切なのは、
「私は今、何を感じているんだろう?」
とともに、
「私は今、何を考えているんだろう?」
と振り返ってみることです。
③の記事で紹介したように、心の中では考えや感情などが互いに関係しながら動いています。
ここでは、その中でも特に「感情に気づくこと」に目を向けてみましょう。
感情は身体にも表れることがある
感情を経験すると、身体にも変化を感じることがあります。
緊張すると、
- 心臓がドキドキする
- 手に汗をかく
- 肩に力が入る
- 呼吸が浅く感じる
などの変化を感じることがあります。
怒っているときに身体に力が入ったり、悲しいときに身体が重く感じたりすることもあるでしょう。
ただし、身体の反応にはさまざまな原因があります。
そのため、
「この身体反応があるから、この感情だ」
と単純に決めることはできません。
それでも、
「今、身体はどんな状態かな?」
と確認することは、自分の状態を知る一つの手がかりになります。
感情は「なくす」のではなく「気づく」
つらい感情を経験すると、
「この気持ちをなくしたい」
と思うことがあります。
不安を感じたくない。
怒りたくない。
悲しくなりたくない。
そう思うのは自然なことです。
でも、生活している限り、私たちはさまざまな感情を経験します。
そのため、
「嫌な感情を一切感じないようにする」
ことを目標にするより、
「今、自分はどんな感情を感じているのかに気づく」
ことから始めてみる方法があります。
「怒っている」
「悲しい」
「不安だ」
と気づくだけでも、自分の状態を少し整理しやすくなることがあります。
「感情に気づく」とはどういうこと?
では、実際にどうすれば自分の感情に気づけるのでしょうか。
特別な方法が必要なわけではありません。
まずは、
「今、どんな気持ち?」
と自分に問いかけてみます。
「うれしい」
「悲しい」
「イライラする」
「不安」
「寂しい」
「安心した」
など、自分が思いついた言葉で構いません。
もし一つの言葉では表現しにくければ、
「ちょっと不安だけど、楽しみでもある」
のように、複数の感情があると考えても構いません。
人の感情は、いつも一つだけとは限りません。
感情を言葉にしてみる
感情に気づく方法の一つとして、感情を言葉にしてみることがあります。
たとえば、
「なんとなく嫌だ」
という状態だったとします。
少し考えてみると、
「不安なのかもしれない」
「寂しいのかもしれない」
「悔しいのかもしれない」
など、別の言葉が見つかることがあります。
感情に名前をつけることで、自分の状態を整理するきっかけになることがあります。
ただし、
「正しい感情の名前を当てなければいけない」
ということではありません。
「悲しいのか、悔しいのか、よく分からない」
でも大丈夫です。
自分なりの言葉で、
「なんだかモヤモヤしている」
と気づくことも、自分の感情に目を向ける一つの方法です。
感情を無理に変えなくてもいい
「前向きに考えよう」
「気にしないようにしよう」
「もっとポジティブになろう」
と言われることがあります。
考え方を変えることで楽になる場合もあります。
でも、悲しいときに無理やり明るく振る舞ったり、不安なのに「不安になってはいけない」と自分に言い聞かせたりする必要がいつもあるわけではありません。
悲しいときは、
「今、自分は悲しいんだな」
と気づく。
不安なときは、
「今、不安を感じているんだな」
と気づく。
怒っているときは、
「私は今、何に怒っているんだろう?」
と考えてみる。
このように、
感情をすぐに変えようとするのではなく、まず気づいてみる
という方法があります。
感情と行動の間に「少し時間」をつくる
感情が強くなると、すぐに行動したくなることがあります。
怒っているときに、相手に強い言葉を返す。
不安なときに、何度も確認する。
悲しいときに、誰とも話したくなくなる。
こうした行動をすること自体が、必ず悪いわけではありません。
ただ、後になって、
「ちょっとやりすぎたかもしれない」
と思うこともあるでしょう。
そんなときには、
感情と行動の間に、少し時間をつくる
という考え方があります。
たとえば、
「今、かなり怒っているな」
と気づいたら、すぐに返事をするのではなく、少し時間を置く。
「今は不安が強いから、落ち着いてから考えよう」
と思ってみる。
「一度、紙に書いて整理してみよう」
とする。
大切なのは、感情を我慢して消すことではありません。
感情に気づいたうえで、自分がどんな行動をするかを考える時間をつくることです。
感情をコントロールしなければいけない?
「感情をコントロールする」という言葉を聞くことがあります。
でも、
「どんな感情でも自分の力で完全に抑えられなければいけない」
と考える必要はありません。
感情は、自分の意思だけですべて自由に生み出したり、消したりできるものではありません。
大切なのは、
感情が生まれたことに気づき、その後の行動をどうするかを考えること
です。
「怒りを感じないようにする」
のではなく、
「怒っていることに気づいた。では、どう行動しよう?」
と考える。
そうすることで、感情を敵にするのではなく、自分の状態を知る手がかりとして見ていくことができます。
感情が強くなると、すぐに行動したくなることがあります。
怒っているときに、相手に強い言葉を返す。
不安なときに、何度も確認する。
悲しいときに、誰とも話したくなくなる。
こうした行動をすること自体が、必ず悪いわけではありません。
ただ、後になって、
「ちょっとやりすぎたかもしれない」
と思うこともあるでしょう。
そんなときには、
感情と行動の間に、少し時間をつくる
という考え方があります。
たとえば、
「今、かなり怒っているな」
と気づいたら、すぐに返事をするのではなく、少し時間を置く。
「今は不安が強いから、落ち着いてから考えよう」
と思ってみる。
「一度、紙に書いて整理してみよう」
とする。
大切なのは、感情を我慢して消すことではありません。
感情に気づいたうえで、自分がどんな行動をするかを考える時間をつくることです。
感情をコントロールしなければいけない?
「感情をコントロールする」という言葉を聞くことがあります。
でも、
「どんな感情でも自分の力で完全に抑えられなければいけない」
と考える必要はありません。
感情は、自分の意思だけですべて自由に生み出したり、消したりできるものではありません。
大切なのは、
感情が生まれたことに気づき、その後の行動をどうするかを考えること
です。
「怒りを感じないようにする」
のではなく、
「怒っていることに気づいた。では、どう行動しよう?」
と考える。
そうすることで、感情を敵にするのではなく、自分の状態を知る手がかりとして見ていくことができます。
今日からできる「感情の観察」
「ここまでの内容を、日常生活の中で試してみる方法があります。
今日一日の中で、少し心が動いた出来事を一つ思い出してみてください。
そして、次のことを振り返ってみます。
①何があった?
「友人から連絡が来なかった」
「仕事で注意された」
「家族と話をした」
など、できるだけ事実に近い形で考えます。
②どんな感情があった?
「怒り」
「悲しさ」
「不安」
「うれしさ」
「安心」
など、自分なりの言葉で表します。
③そのとき、何を考えていた?
「嫌われたのかな」
「失敗した」
「次は頑張ろう」
など、頭の中に浮かんでいたことを振り返ります。
④身体はどんな状態だった?
「肩に力が入っていた」
「胸がドキドキしていた」
「疲れていた」
など、思い出せる範囲で振り返ります。
全部を完璧に振り返る必要はありません。
まずは、
「私は今、どんな気持ちなんだろう?」
と一度問いかけてみるだけでも十分です。
感情について考えることは、自分について考えることにもつながる
自分の感情を振り返っていると、
「自分はこういうときに不安になりやすいんだ」
「疲れていると、いつもよりイライラしやすいんだ」
「この言葉を聞くと、悲しくなるんだ」
など、自分についての気づきが生まれることがあります。
これは、④の記事で紹介した「自分を知ること」ともつながっています。
ただし、
「自分はこういう人間だ」
と決めつける必要はありません。
同じ人でも、その日の体調や環境、人間関係などによって、感じ方が変わることがあります。
だから、
「私はいつもこうだ」
ではなく、
「今の私は、こう感じているんだな」
と、そのときの自分を見てみることが大切です。
感情は、自分を知るための入口になる
感情が生まれたとき、
「どうしてこんな気持ちになるんだろう?」
と少し立ち止まってみることができます。
「何があった?」
「今、どんな気持ち?」
「何を考えていた?」
「身体はどうだった?」
そんなふうに見ていくと、自分の心について新しい発見があるかもしれません。
感情は、必ずしも「すぐに解決しなければならない問題」ではありません。
感情に気づき、自分の状態について考えてみる。
それも、心理学を暮らしの中で活かす一つの方法です。
「感じてはいけない感情」はない
私たちは、ときどき、
「怒ってはいけない」
「悲しんではいけない」
「不安になってはいけない」
と思ってしまいます。
でも、感情を感じたこと自体を責める必要はありません。
大切なのは、
「その感情を感じた自分はダメだ」
と決めつけることではなく、
「今、自分はこの感情を感じている」
と気づくことです。
そして、その感情を感じたうえで、次にどうするかを考えていく。
感情と行動を分けて考えることで、自分の心との付き合い方を少しずつ考えやすくなります。
ちょっと考えてみよう
今日、感情が動いた出来事があったら、一度だけ自分に問いかけてみませんか?
「私は今、どんな気持ちなんだろう?」
そして、もう一つ問いかけてみます。
「何があって、そう感じたんだろう?」
正しい答えを出す必要はありません。
「よく分からない」でも大丈夫です。
自分の感情に気づこうとすることそのものが、自分の状態について考えるきっかけになります。
心理学を使って、自分の感情を無理に変えようとするのではなく、
「ちょっと考えてみよう」
と立ち止まってみる。
そんな小さなところから、心理学を暮らしの中に取り入れることができます。
まとめ
感情は、私たちが毎日の暮らしの中で経験する自然な心の動きの一つです。
心理学では、感情についてさまざまな研究や考え方があります。
感情を単純に「良い・悪い」と分けることはできません。
怒りや悲しみ、不安なども、自分の状態を考えるための手がかりになることがあります。
また、感情は考えや身体の状態、行動などとも関係しています。
同じ出来事でも、人によって感じ方が違うこともあります。
大切なのは、感情をなくしたり、いつも前向きになったりすることだけではありません。
「今、自分はどんな気持ちなんだろう?」
と、自分の感情に気づいてみること。
そして、
「この感情を感じた自分はダメだ」と責めるのではなく、「今、自分には何が起きているんだろう?」と考えてみること。
その小さな気づきが、自分の状態を知るための一歩になるかもしれません。
今日の自分の気持ちを、少しだけ見てみる。
ちょっと考えてみよう。

