なぜイライラする?怒りのしくみ

心の健康

なぜイライラする?怒りのしくみを心理学から考えてみよう

「なんでこんなにイライラするんだろう?」

「ちょっとしたことで腹が立ってしまった」

「怒りたくないのに、気づいたらイライラしている」

そんな経験はありませんか。

私たちは毎日の生活の中で、さまざまな感情を経験します。

その中でも「怒り」は、とても強く感じられることがあります。

家族の言葉にイラッとする。

仕事が思い通りに進まず腹が立つ。

予定どおりにいかなくて焦る。

誰かの態度が気になって、怒りがわいてくる。

でも、怒りは突然どこからともなく出てくるものなのでしょうか。

心理学では、怒りを含めた感情についてさまざまな研究が行われています。

人の心を一つの簡単な仕組みだけで説明することはできません。

それでも、

「何が起きたのか」
「自分はどう受け止めたのか」
「そのとき何を感じたのか」
「身体にどんな変化があったのか」
「その後どう行動したのか」

と順番に振り返ってみることで、自分の怒りを少し理解しやすくなることがあります。

この記事では、「怒ってはいけない」と考えるのではなく、「なぜ自分はイライラしたのだろう?」と怒りのしくみを眺めてみることを考えていきます。

そもそも「怒り」とは?

怒りは、私たちが経験する感情の一つです。

「うれしい」

「悲しい」

「不安」

「楽しい」

「寂しい」

などと同じように、怒りも人間が経験する自然な感情です。

たとえば、

  • 約束を破られた
  • 自分の話を聞いてもらえなかった
  • 思いどおりに物事が進まなかった
  • 頑張っているのに認めてもらえなかった
  • 自分にとって大切なものを傷つけられた

といった出来事で、怒りを感じることがあります。

ただし、同じ出来事が起きても、誰もが同じように怒るとは限りません。

ある人は腹が立つかもしれません。

別の人は悲しくなるかもしれません。

また別の人は、「まあ、そういうこともある」と受け止めるかもしれません。

この違いには、その人の考え方やこれまでの経験、そのときの体調、周囲の環境など、さまざまなことが関係している可能性があります。

→感情とは?心理学から考える「気持ち」との付き合い方

「出来事=怒り」ではない

たとえば、家族にお願いしていたことを忘れられたとします。

起きた出来事は、

「お願いしていたことを忘れられた」

ということです。

でも、その出来事を経験したとき、

「自分のことを大切にしてくれていない」

「いつも自分ばかり我慢している」

「どうせ何を言っても聞いてくれない」

などと受け止めることがあるかもしれません。

すると、

「腹が立つ」

「悔しい」

「悲しい」

といった気持ちが生じることがあります。

そして、

  • 強い口調で言い返す
  • その場を離れる
  • 黙り込む
  • 誰かに話す
  • 相手を責める

などの行動につながることもあります。

もちろん、実際の心の動きはこれほど単純ではありません。

それでも、

出来事 → 受け止め方や考え → 感情や身体の変化 → 行動

という視点から振り返ってみると、自分の怒りについて考える手がかりになることがあります。

これは、③「心のしくみ」で紹介した考え方ともつながっています。

怒りの中に、別の気持ちがあることも

「怒っている」と思っていても、その中に別の気持ちが含まれていることがあります。

たとえば、

「なんで分かってくれないの!」

という怒りの中に、

「本当は分かってほしかった」

という気持ちがあるかもしれません。

「もう知らない!」

という怒りの中に、

「大切にしてほしかった」

という気持ちがあるかもしれません。

「なんで私ばっかり!」

という怒りの中に、

「頑張っていることを認めてほしい」

という思いがあるかもしれません。

もちろん、怒りの中に必ず別の感情があるわけではありません。

それでも、

「私は何に怒っているんだろう?」

と少し掘り下げてみることで、自分の気持ちに気づけることがあります。

さらに、

「私は、本当は何を大切にしていたんだろう?」

と考えてみると、自分自身について新しい発見があるかもしれません。

怒ると身体にも変化が起こる

怒りを感じたときには、気持ちだけでなく身体にも変化を感じることがあります。

たとえば、

  • 心臓がドキドキする
  • 身体に力が入る
  • 顔が熱くなる
  • 呼吸が速くなる
  • 肩に力が入る
  • 落ち着かなくなる

などです。

こうした変化は、人によって異なります。

身体の変化に気づくことで、

「なんだか肩に力が入っている」

「身体が熱くなってきた」

「もしかして、今かなりイライラしているのかもしれない」

と、自分の状態を振り返るきっかけになることがあります。

疲れていると、イライラしやすいこともある

同じ出来事でも、いつも同じように感じるとは限りません。

たとえば、十分に休めている日は、

「まあ、仕方ないか」

と思えたことでも、疲れている日は、

「なんでこんなこともできないの!」

と強くイライラすることがあります。

睡眠不足や疲労、忙しさ、ストレスなど、日々の生活状態が感情に影響することもあります。

そのため、

「どうして今日はこんなにイライラするんだろう?」

と思ったときには、

「最近、ちゃんと休めているかな?」

と自分の状態を確認してみることもできます。

これは、

「怒ったのは疲れていたから仕方ない」

とすべてを片づけるという意味ではありません。

自分の状態を知ることで、怒りが生じた背景を考える材料にするということです。

→ストレスとは?心と身体に起こる変化を知ろう

「期待」と「現実」の違いが怒りにつながることもある

怒りについて考えるとき、「こうなるはず」「こうしてほしい」という期待も一つの視点になります。

たとえば、

「普通ならこれくらい分かるはず」

「約束したのだから守るはず」

「これだけ頑張ったのだから、認めてもらえるはず」

と思っていたのに、現実が違っていた。

すると、

「なんで?」

「どうして?」

という気持ちが生まれることがあります。

そんなときには、

「私は、この状況に何を期待していたんだろう?」

と考えてみることができます。

期待すること自体が悪いわけではありません。

人との関係では、「こうしてほしい」「こうしてもらえるとうれしい」と思うことは自然なことです。

大切なのは、自分がどんな期待を持っていたのかに気づくことです。

怒りを感じることと、怒りのまま行動することは違う

ここは、怒りについて考えるうえで大切なポイントです。

怒りを感じることと、怒りのまま行動することは同じではありません。

「腹が立った」という感情が生じても、

必ず大声を出す必要があるわけではありません。

相手を傷つける必要もありません。

一方で、

「怒ってはいけない」

と感情そのものを無理になくそうとする必要もありません。

まずは、

「今、自分は怒っている」

と気づく。

そのうえで、

「何が嫌だったんだろう?」

「何を大切にしていたんだろう?」

「自分はどうしたいんだろう?」

と考えてみる。

このように、感情に気づくことと、その後どう行動するかを分けて考えることができます。

「怒っている自分はダメ」と考えなくてもいい

イライラした後に、

「また怒ってしまった」

「自分は性格が悪い」

「こんなことで怒るなんて、自分はダメだ」

と、自分自身を責めてしまうことがあります。

でも、怒りを感じたというだけで、自分のことを悪い人だと決める必要はありません。

怒りは、人が経験する感情の一つだからです。

もちろん、怒りによって誰かを傷つけてしまった場合には、その行動について振り返ることは大切です。

ただ、

「怒りを感じた自分」

と

「怒りを感じたあとに取った行動」

は分けて考えることができます。

「自分は怒ってはいけない」

ではなく、

「自分はなぜ怒ったのだろう?」

「そのとき、どうすればよかっただろう?」

と考えてみる。

そんな視点も、自分の心を理解することにつながります。

イライラしたときに「ちょっと考えてみよう」

イライラしたとき、すべてを分析する必要はありません。

まずは、次の中から一つだけ考えてみましょう。

「何があった?」

「予定を急に変更された」

「話を途中で遮られた」

「仕事を急に頼まれた」

など、起きた出来事を振り返ります。

「私はどう受け止めた?」

その出来事について、自分はどう受け止めたでしょうか。

「大切にされていない」

「また自分ばかりだ」

「どうせ分かってもらえない」

など、頭に浮かんだ考えを振り返ってみます。

「本当は何を大切にしていた?」

「ちゃんと話を聞いてほしかった」

「自分の時間を大切にしたかった」

「頑張ったことを認めてほしかった」

など、自分が大切にしていたことを考えてみます。

「今、どうしたい?」

「少し離れたい」

「落ち着いてから話したい」

「自分の気持ちを伝えたい」

「今日は休みたい」

など、今の自分にできそうなことを考えてみます。

全部できなくても大丈夫です。

一つ気づくだけでも十分です。

「怒りの記録」をつけてみる

もし、最近イライラすることが多いと感じるなら、簡単なメモを残してみる方法もあります。

たとえば、

出来事
仕事を急に頼まれた

考え
「また自分に押しつけられた」

気持ち
イライラ、悔しい

身体
肩に力が入った

行動
強い口調で返事をした

本当はどうしたかった?
「今は難しい」と伝えたかった

というように書いてみます。

こうして振り返ると、

「自分は急な予定変更が苦手なのかもしれない」

「疲れているときにイライラしやすいのかもしれない」

「本当は断りたいのに、我慢していることが多いのかもしれない」

など、自分について新しい気づきが得られることがあります。

ただし、こうした記録は「正しい原因を探すため」のものではありません。

そのときの自分を振り返るための材料として使ってみましょう。

怒りの感じ方は、人によって違う

「怒りやすい人」と「怒らない人」がいるように見えることがあります。

でも、怒りの感じ方や表し方は人によってさまざまです。

怒りを言葉にする人もいれば、黙り込む人もいます。

その場では平気そうにしていても、後から怒りを感じる人もいます。

また、同じ人でも、

  • 疲れているとき
  • 忙しいとき
  • 不安を感じているとき
  • 大切なことがうまくいかないとき

などによって、反応が変わることがあります。

だから、

「自分は怒りっぽい人間だ」

と一つの言葉で決めつける必要はありません。

「どんなときに、どんな怒りを感じやすいのか」

と、自分の傾向を少しずつ知っていくことが大切です。

怒りは「自分が大切にしているもの」を知る手がかりにもなる

怒りについて考えることは、自分が大切にしているものを知るきっかけになることがあります。

たとえば、

約束を破られると腹が立つ。
→「約束を守ること」を大切にしているのかもしれません。

努力を認めてもらえないと腹が立つ。
→「頑張ったことを認めてもらうこと」を大切にしているのかもしれません。

話を聞いてもらえないと腹が立つ。
→「自分の気持ちを分かってもらうこと」を大切にしているのかもしれません。

もちろん、必ずそうだとは限りません。

それでも、

「私は何を大切にしているから、こんなに腹が立ったんだろう?」

と考えてみることで、自分自身について知るきっかけになることがあります。

怒りをなくすことより、怒りを知る

怒りについて考えると、

「どうすれば怒らなくなるの?」

ということが気になるかもしれません。

でも、私たちは毎日の生活の中で、嫌なことや思いどおりにならないことを完全になくすことはできません。

だから、

「怒らない人になる」

ことだけを目標にする必要はありません。

むしろ、

「自分はどんなときに怒る?」

「何を大切にしている?」

「怒るとき、自分にはどんな変化がある?」

「怒った後、自分はどんな行動をしている?」

と知っていくことが、自分の心との付き合い方を考える手がかりになります。

怒りを感じる自分を責めるのではなく、

「今、自分の中では何が起きているんだろう?」

と少し離れて眺めてみる。

それが、怒りについて考える最初の一歩です。

今日、ちょっと考えてみよう

今日、もしイライラすることがあったら、すぐに解決しようとしなくても構いません。

まず、

「あ、今イライラしている」

と気づいてみましょう。

そして、一つだけ問いかけてみます。

「私は、何が嫌だったんだろう?」

余裕があれば、

「本当は、どうしてほしかったんだろう?」

と考えてみます。

さらに、

「今の自分は、疲れていないかな?」

と、自分の状態にも目を向けてみます。

答えがすぐに見つからなくても大丈夫です。

怒りを完全に理解する必要もありません。

「ちょっと考えてみる」

それだけでも、自分の心を知る小さな一歩になります。

まとめ

怒りは、私たちが経験する自然な感情の一つです。

同じ出来事でも、人によって怒りの感じ方が違うことがあります。

怒りには、出来事だけでなく、その出来事をどう受け止めたか、そのときの体調や状況、何を大切にしていたかなど、さまざまなことが関係しています。

怒りを感じたときには、考えや感情だけでなく、身体の変化や行動にも目を向けることができます。

「怒ってしまった自分はダメ」と決めつけるのではなく、

「自分には何が起きていたんだろう?」

と振り返ってみることもできます。

怒りをなくすことだけを目指すのではなく、自分がどんなときに、どのような怒りを感じるのかを知っていくことも、自分を理解する一つの方法です。

今日イライラすることがあったら、

「私は、何が嫌だったんだろう?」

と、ちょっと考えてみましょう。