自分を知るとは?心理学から考える「自己理解」

心の健康

「自分のことなのに、自分がよく分からない」

そんなふうに感じたことはありませんか。

自分は何が好きなのか。

何を大切にしているのか。

どんなときにうれしくなったり、疲れたりするのか。

なぜ、あることにはイライラするのか。

どうして、分かっているのに行動できないのか。

私たちは毎日、自分と一緒に暮らしています。

それでも、自分のことをすべて分かっているわけではありません。

だからこそ、自分について少しずつ知っていくことには意味があります。

心理学では、自分自身について理解していくことを「自己理解」と呼ぶことがあります。

この記事では、自己理解を難しいものとして考えるのではなく、毎日の暮らしの中で自分を知っていく方法を一緒に考えてみます。

「自分を知る」ってどういうこと?

「自分を知る」と聞くと、

「自分の性格を知ること」

「自分の長所と短所を知ること」

「自分に向いていることを見つけること」

などを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、こうしたことも自分を知る一つの方法です。

でも、自分を知ることは、

「私はこういう人」と一つの言葉で決めることではありません。

例えば、

「私は人見知りだから、人と話すのが苦手」

と決めつけるのではなく、

「初対面の人と話すときは緊張しやすいけれど、慣れてくると話しやすい」

と、自分の特徴を具体的に見ていくこともできます。

人は、相手や環境、そのときの体調や経験などによって、違った一面を見せることがあります。

そのため、

「自分にはどんな特徴があるんだろう?」

と、さまざまな場面から少しずつ見ていくことが、自己理解の一つの方法になります。

自分を知るための5つの視点

自分を知るときには、性格だけに注目する必要はありません。

毎日の暮らしの中で、自分について考える手がかりになるものには、さまざまなものがあります。

ここでは、5つの視点から考えてみましょう。

自分の「考え」を知る

私たちは、毎日の生活の中でさまざまなことを考えています。

例えば、仕事で失敗したとき、

「次は気をつけよう」

と思うかもしれません。

一方で、

「自分は何をやってもダメだ」

と思うこともあるでしょう。

同じ出来事でも、自分がどのように受け止めるかによって、その後の気持ちや行動が変わることがあります。

そのため、

「私は、どんなことを考えやすいんだろう?」

と振り返ってみることは、自分の特徴を知る手がかりになります。

「失敗すると自分を責めやすい」

「困ったときには、まず方法を考える」

など、自分なりの傾向に気づくこともあるでしょう。

自分の「感情」を知る

私たちは毎日、さまざまな感情を経験します。

うれしい。

悲しい。

不安。

怒り。

安心。

寂しさ。

こうした感情を振り返ることも、自分を知る手がかりになります。

例えば、

「人から認めてもらえるとうれしい」

「急に予定が変わると不安になりやすい」

「一人で過ごす時間がないと疲れやすい」

など、自分の感情の動きから気づくことがあるかもしれません。

感情については、次の記事で詳しく扱います。

→ 感情とは?心理学から考える「気持ち」のしくみ

自分の「行動」を知る

自分を知るときには、実際にどんな行動をしているのかにも目を向けてみましょう。

例えば、困ったことが起きたとき、

すぐに誰かに相談する人もいれば、一人で考える人もいます。

情報を集める人もいれば、しばらく様子を見る人もいるでしょう。

どれが正解ということではありません。

大切なのは、

「私は困ったとき、どんな行動をすることが多いんだろう?」

と、自分の傾向に気づくことです。

行動を振り返ると、「自分はこういうときにこうすることが多い」という特徴が見えてくることがあります。

自分が「大切にしていること」を知る

自己理解の中でも大切なのが、**「自分にとって何が大切なのか」**を考えることです。

例えば、

  • 家族との時間を大切にする
  • 仕事を丁寧にすることを大切にする
  • 自由な時間を大切にする
  • 人とのつながりを大切にする
  • 新しいことに挑戦することを大切にする

など、人によって大切にしていることは違います。

こうした「自分にとって大切なこと」を、心理学では「価値観」という言葉で表すことがあります。

価値観とは、簡単に言えば、

「自分は何を大切だと思っているのか」

という考え方です。

自分の価値観を知ると、

「なぜ、このことが気になるんだろう?」

「どうして、この選択をしたいんだろう?」

と考える手がかりになることがあります。

自分の「得意・苦手」を知る

自分を知ることは、苦手なところを探すことだけではありません。

例えば、

「人の話を聞くのが得意」

「一人で集中するのが得意」

「細かい作業が苦にならない」

「予定を立てるのが苦手」

など、自分の特徴を知ることも自己理解の一つです。

ここで大切なのは、

得意・苦手を、すぐに「良い・悪い」と評価しないことです。

「人と話すのが苦手」という特徴があっても、一人でじっくり考えることは得意かもしれません。

「予定を立てるのが苦手」でも、その場の状況に合わせて柔軟に対応することが得意かもしれません。

自分の特徴を知ることは、自分に合った環境や方法を考える手がかりになることがあります。

「自分はこういう人」と決めつけなくていい

自分を知ろうとすると、

「私はこういう性格なんだ」

と決めたくなることがあります。

でも、人はいつも同じ反応をするわけではありません。

元気なときと疲れているときでは、行動が違うかもしれません。

一人でいるときと、人と一緒にいるときでも違うかもしれません。

過去には苦手だったことが、経験を重ねるうちに変わることもあります。

だから、

「私はこういう人間だ」と固定するより、「今の自分にはこういう傾向がある」と考えてみるのも一つの方法です。

自分を一つの型に当てはめるのではなく、変化する自分も含めて知っていく。

それも自己理解の一つです。

自分を知ると、何が見えてくる?

自分を知ったからといって、すぐに悩みがなくなるわけではありません。

また、自分のことを理解すれば、いつでも迷わなくなるわけでもありません。

それでも、

「自分はどんなことを大切にしているのか」

「どんなことが得意で、何が苦手なのか」

「どんな場面で疲れやすいのか」

「困ったときにどんな行動をしやすいのか」

などが少しずつ分かってくると、自分について考えるための材料が増えていきます。

例えば、

「一人で考える時間があると落ち着く」

と分かれば、その時間を大切にすることを考えられるかもしれません。

「人と話すことで考えが整理されやすい」

と分かれば、誰かに話してみるという選択肢を考えられるかもしれません。

このように、自分を知ることは、自分に合った選択や暮らし方を考えるための手がかりになることがあります。

今日からできる「自分の観察」

自分を知るために、特別なことを始める必要はありません。

今日一日の中から、少し印象に残った出来事を一つ思い出してみましょう。

そして、次の中から一つだけ考えてみます。

「そのとき、私は何を考えていた?」

「どんな気持ちになった?」

「私はどう行動した?」

「自分にとって、何が大切だった?」

例えば、

「予定が急に変わって嫌だった」

という出来事があったなら、

「自分は予定を決めておくことを大切にしているのかもしれない」

と気づくことがあるかもしれません。

すぐに答えが見つからなくても構いません。

「そういえば、自分はこういうときにこう感じることが多いな」

と気づくだけでも、自分を知るきっかけになります。

自分を知ることは、一度で終わるものではない

自己理解は、一度やれば完成するものではありません。

生活する環境が変わったり、新しい経験をしたりすると、自分について新しく気づくこともあります。

以前は苦手だったことが、今はそれほど気にならないかもしれません。

反対に、以前は気にならなかったことを、大切だと感じるようになることもあります。

だからこそ、

「今の自分はどうなんだろう?」

と、ときどき自分を見直してみることにも意味があります。

自分を知ることは、「本当の自分」を一度で見つけることではありません。

その時々の自分について、少しずつ気づいていくことなのです。

ちょっと考えてみよう

自分を知ることは、自分の良いところだけを探すことでも、苦手なところを直すことでもありません。

考え、感情、行動、価値観、得意・苦手など、さまざまな面から、

「私はどんな人なんだろう?」

と少しずつ見ていくことです。

そして、分かったことをもとに、

「自分にとって大切なものは何だろう?」

「今の自分には、どんなことが合っているんだろう?」

と考えてみる。

その答えは、いつも同じとは限りません。

今日の自分と、これからの自分では、違う答えになることもあるでしょう。

だからこそ、完璧に自分を理解しようとしなくても大丈夫です。

ここたねと一緒に、ちょっと考えてみましょう。

「今の私は、どんなことを大切にしているかな?」

※この記事で紹介している自己理解の考え方は、心理学から自分について考えるための一般的な情報です。すべての人に同じように当てはまるわけではありません。心身の不調や日常生活での困りごとが続いている場合には、一人で抱え込まず、身近な人や専門機関に相談することも大切です。

まとめ

自分を知ることは、「私はこういう人」と決めつけることではありません。

考え・感情・行動・価値観・得意や苦手など、さまざまな面から自分について少しずつ気づいていくことが、自己理解につながります。

自分を知ることで、自分に合った選択や暮らし方を考えるための手がかりが得られることがあります。

大切なのは、完璧に自分を理解することではありません。

「今の自分はどうなんだろう?」と、ときどき立ち止まってみること。

今日、新しく気づいた自分の一面が一つあれば、それも自己理解の一歩です。