心の健康は育てられる?毎日の暮らしから考えてみよう

心の健康

「心の健康を保つには、何をすればいいのだろう?」

そんな疑問を持ったことはありませんか。

ストレスをためないようにする。
前向きに考える。
よく眠る。
運動する。
人に相談する。

心の健康について調べると、さまざまな方法が紹介されています。

でも、心の健康は「これをすれば完成」というものなのでしょうか。

私たちは、心の健康を毎日の暮らしの中で少しずつ育てていくものとして考えています。

ここでいう「育てる」は、自分を無理に変えることでも、いつも前向きになることでもありません。

自分の状態に気づき、自分にとって大切なことを考えながら、そのときの自分に合った暮らし方を少しずつ探していくことです。

この記事では、心理学の知見を参考にしながら、「心の健康を育てる」とはどういうことなのかを一緒に考えてみます。

心の健康は「いつも元気」でいることではない

まず大切なのは、

心の健康=いつも明るく前向きでいること

ではないということです。

私たちの生活には、うれしいことだけでなく、

悲しいこと

不安になること

イライラすること

思い通りにならないこと

失敗すること

人間関係で悩むこと

もあります。

こうした経験があるからといって、それだけで「心が健康ではない」と考える必要はありません。

心の健康について考えるときには、つらい感情をなくすことだけではなく、今の自分がどのような状態なのかに気づくことも大切です。

例えば、「最近なんとなく調子が悪い」と感じたとき。

「疲れているのかな」

「不安を感じているのかな」

「何かにイライラしているのかな」

と、自分の状態に少し目を向けてみる。

そこから、「今の自分には何が必要なのだろう」と考えていくことができます。

「心の健康を育てる」とはどういうこと?

「育てる」という言葉から、何か特別な努力をしなければならないように感じるかもしれません。

でも、ここでいう「育てる」は、

毎日頑張って、自分を変えること

ではありません。

例えば、以前は自分の気持ちに気づかないまま過ごしていた人が、

「今日はなんだかイライラしているな」

と気づけるようになる。

失敗したときに、

「自分はダメだ」

とすぐに決めつけるのではなく、

「何がうまくいかなかったのかな?」

と考えてみる。

いつも一人で悩んでいた人が、

「今回は誰かに相談してみよう」

と思えるようになる。

このような自分の心との付き合い方の変化も、心の健康を育てる一つの過程として考えることができます。

心の健康を育てるために、自分の状態を知る

心の健康を育てることを考えるとき、まず大切にしたいのが、

「今、自分はどうしているんだろう?」

と自分の状態を知ることです。

気持ちや考えに目を向けてみる

私たちは、出来事を経験すると、さまざまな感情や考えを抱きます。

例えば、誰かから注意されたとき、

「腹が立った」

と感じる人もいれば、

「悲しくなった」

「自分が悪かったのかなと不安になった」

と感じる人もいるかもしれません。

同じ出来事でも、感じ方や考え方は人によって違います。

だからこそ、

「自分は今、何を感じているんだろう?」

「自分はこの出来事をどう受け止めているんだろう?」

と振り返ってみることが、自分を知る手がかりになります。

心のしくみや自己理解、感情については、次の記事で詳しく紹介しています。

→ 心のしくみを知ると何が変わる?「感情・考え・行動」のつながり

→ 自分を知るとは?心理学から考える「自己理解」

→ 感情とは?心理学から考える「気持ち」との付き合い方

自分にとって大切なことを考えてみる

自分の状態に気づくことは、自分を評価することではありません。

「自分は弱い」

「もっと頑張らなければいけない」

と判断するためでもありません。

むしろ、

「自分は何を大切にしているんだろう?」

と考えてみることが、自分の暮らしを見つめるきっかけになることがあります。

例えば、

「家族との時間を大切にしたい」

「自分のペースで過ごしたい」

「仕事を頑張ることを大切にしたい」

「人とのつながりを大切にしたい」

など、人によって大切にしたいことは異なります。

心の健康を考えるときには、こうした自分の価値観や大切にしていることにも目を向けてみることができます。

暮らしの中で、自分に合うものを探していく

自分の状態に気づいたら、次に「どうすればいいか」の答えをすぐに決める必要はありません。

まず、

「今の自分には何が必要なのだろう?」

と考えてみます。

できそうなことを試してみる

例えば、疲れていることに気づいたなら、

少し休む。

予定を減らす。

誰かに話してみる。

気分転換をしてみる。

など、そのときの自分にできそうなことを考えてみます。

大切なのは、「これをすれば必ず心が健康になる」という方法を探すことではありません。

今の自分には、どんなことが合いそうなのかを考えてみることです。

うまくいかなければ、別の方法を考える

試してみた方法が、自分には合わないこともあります。

休んでも気持ちが変わらない。

誰かに話してみたけれど、かえって疲れてしまった。

予定を減らしてみても、あまり楽にならなかった。

そんなこともあるでしょう。

だからといって、「自分には心の健康を育てることができない」と考える必要はありません。

自分に合う方法は、そのときの状態や環境によっても変わります。

試してみて、振り返って、また考える。

その繰り返しも、自分の心や暮らしを知っていく過程です。

ストレスとの付き合い方や対処については、こちらの記事も参考にしてください。

→ ストレスとは?心と身体に起こる変化を知ろう

→ コーピングとは?ストレスとの付き合い方を考える

心の健康は「完璧になること」ではない

心の健康を育てると聞くと、

「毎日、自分を成長させなければいけない」

「昨日より今日、今日より明日と、良くならなければいけない」

と感じるかもしれません。

でも、そうではありません。

昨日は自分の気持ちに気づけたのに、今日は気づけないこともあります。

うまく対処できたと思ったのに、また同じことで悩むこともあります。

人に相談できる日もあれば、一人で抱えてしまう日もあるでしょう。

心の状態は、生活や環境、そのときの出来事などによって変化します。

だから、心の健康を育てることを「いつでも安定している状態になること」と考える必要はありません。

自分の状態に気づき、そのときの自分に合った方法を考えていく。

その積み重ねそのものを大切にしてみましょう。

「昨日の自分より今日の自分」を大切にする

このサイトでは、

「昨日の自分より今日の自分の方が、ちょっと心が健康かも」

と思えることを大切にしています。

これは、

「毎日、昨日より成長しなければならない」

という意味ではありません。

昨日より少し自分の気持ちが分かった。

自分が疲れていることに気づけた。

「今は休んだほうがいいかもしれない」と考えられた。

誰かに相談するという選択肢を思い出せた。

そんな小さな気づきも大切にするということです。

反対に、今日は何もできなかったと感じる日があっても、それだけで心の健康が失われたわけではありません。

自分を良くすることだけを目指すのではなく、その日の自分の状態を知ること。

それも、心の健康を育てることにつながっていきます。

心の健康は、自分だけで育てるものではない

ここまで読むと、

「自分で頑張って心の健康を育てなければいけない」

と感じるかもしれません。

でも、心の健康は自分の努力だけで決まるものではありません。

私たちの心には、身体の状態、生活環境、人間関係など、さまざまなことが影響します。

自分では変えられない環境があることもあります。

だから、

「自分の努力が足りないから、心が健康になれない」

と考えすぎないことも大切です。

自分でできることを考えながら、必要なときには周囲の人や専門機関の力を借りる。

それも、自分の心を大切にする一つの方法です。

人に相談することや助けを求めることについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

→ 人に相談する・助けを求める

ちょっと考えてみよう

ここまで読んだら、今の自分について少し考えてみませんか。

「最近の自分は、どんな状態なんだろう?」

そして、

「今の自分にとって、大切にしたいことは何だろう?」

と考えてみます。

すぐに答えが出なくても構いません。

「よく分からない」という答えでも大丈夫です。

自分の状態や大切にしていることに目を向けることそのものが、自分の心や暮らしを見つめるきっかけになります。

心理学を知ることは、心理学の知識を増やすことだけが目的ではありません。

「自分の場合はどうだろう?」

と、自分の心や暮らしについて考えてみるための一つの視点として使うこともできます。

心の健康を育てることは、決められた方法を実践して、自分を理想の状態に変えることではありません。

自分の状態を知り、自分にとって大切なことを考え、そのときの自分に合った暮らし方を少しずつ探していくこと。

そんな過程も、心の健康を育てることの一つなのかもしれません。

こんなときは一人で抱え込まないでください

この記事で紹介している内容は、心理学を暮らしの中で活かすための一般的な情報です。すべての人に同じように当てはまるものではありません。

心身の不調が続いている場合や、日常生活に大きな支障がある場合には、一人で抱え込まず、医療機関や相談機関などの専門機関にご相談ください。

まとめ

心の健康は、「いつも元気でいること」でも「前向きな考え方を身につけること」でもありません。

心の健康を「育てる」と考えるときには、まず、

「今、自分はどうしているんだろう?」

と、自分の状態に目を向けてみることができます。

そして、

  • 自分は何を感じているのか
  • どのように考えているのか
  • 今の自分には何が必要なのか
  • 自分にとって何が大切なのか

を少しずつ考えていく。

そのうえで、自分に合いそうなことを試してみる。

うまくいかなければ、また別の方法を考えてみる。

必要なときには、人の力を借りる。

そんな積み重ねの中で、自分の心や暮らしについて分かることが増えていくかもしれません。

心の健康を育てることは、自分を無理に変えることではありません。

自分の状態を知り、自分にとって大切なことを考えながら、自分の暮らしとの付き合い方を探していく。

まずは今日、

「今の自分は、どんな状態なんだろう?」

と、少し立ち止まってみませんか。