コーピングとは?ストレスとの付き合い方を考える

心の健康

「ストレスを感じたとき、どうすればいいんだろう?」

「気分転換したいけれど、何をすればいいか分からない」

「自分に合ったストレスへの対処法を知りたい」

そんなときに知っておきたい心理学の言葉の一つが、「コーピング」です。

コーピング(coping)とは、ストレスを感じたときに、そのストレスに対処しようとすることです。

ストレスへの対処というと、気分転換やリラックスを思い浮かべるかもしれません。しかし、コーピングには、問題そのものに取り組むことや、誰かに相談することなど、さまざまな方法があります。

大切なのは、いつでも同じ方法を使うことではなく、そのときの状況や自分の状態に合わせて、対処の方法を考えてみることです。

この記事では、コーピングの基本的な考え方や具体的な方法、自分に合った対処法を見つけるヒントを紹介します。

コーピングとは?

コーピングは、ストレスに対して、人がどのように対処しようとするのかを考えるときに使われる言葉です。

たとえば、仕事で大きな失敗をしたとします。

そのとき、

「何が原因だったのか整理してみよう」

と考えて、問題の解決に取り組むかもしれません。

あるいは、

「今日はかなり疲れたから、まずゆっくり休もう」

と考えることもあるでしょう。

誰かに「少し話を聞いてほしい」と相談することも、コーピングの一つです。

このように、ストレスを感じたときに、自分なりに対処しようとすることがコーピングです。

ストレスそのものについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

→ストレスとは?心と身体に起こる変化を知ろう

コーピングは「ストレスをなくす方法」ではない

コーピングについて考えるとき、大切なポイントがあります。

それは、コーピングは、ストレスを完全になくすことだけを目指すものではないということです。

たとえば、仕事そのものをすぐに変えることが難しい場合があります。人間関係も、自分一人の努力だけでは変えられないことがあります。

そんなとき、「ストレスをゼロにしなければ」と考えると、かえって苦しくなるかもしれません。

そこで、

「今の状況で、自分にできることは何だろう?」

と考えてみます。

問題を少しずつ整理することも、気持ちを落ち着けることも、休息をとることも、ストレスへの対処になり得ます。

必ずしも状況をすぐに変えられなくても、今できる対応を考えることには意味があります。

コーピングにはどんな方法がある?

コーピングには、さまざまな方法があります。ここでは、代表的なものを紹介します。

1.問題そのものに取り組む

ストレスの原因となっている問題に働きかける方法です。

たとえば、仕事が多すぎて困っている場合には、

  • 仕事の優先順位を整理する
  • 予定を組み直す
  • 必要な情報を集める
  • 仕事を分担できないか考える

といった方法が考えられます。

「何が問題なのか」「自分にできることは何か」を整理し、具体的な行動につなげていく方法です。

ただし、問題によっては、自分の努力だけでは解決できないこともあります。すべてを自分一人で何とかしようとする必要はありません。

2.気持ちを整える

ストレスの原因をすぐに変えられないときには、今感じているつらさとどう付き合うかを考えることも大切です。

たとえば、

  • 気持ちを紙に書き出す
  • ゆっくり呼吸する
  • 安心できる場所で過ごす
  • 誰かに話を聞いてもらう

などの方法があります。

問題そのものが解決するわけではなくても、気持ちを整理したり、少し落ち着きを取り戻したりするきっかけになることがあります。

3.気晴らしや休息をとる

ストレスを感じているとき、問題について考え続けることが、かえって疲れにつながる場合もあります。

そんなときには、いったん問題から離れてみることも選択肢の一つです。

たとえば、

  • 音楽を聴く
  • 映画やゲームを楽しむ
  • 散歩をする
  • 趣味の時間を過ごす
  • ゆっくりお風呂に入る
  • 早めに寝る

などです。

気晴らしや休息は、問題を放置することと同じではありません。少し距離を置くことで、改めて問題に向き合いやすくなることもあります。

4.誰かに相談する

コーピングというと、「自分で何とかする方法」というイメージがあるかもしれません。

しかし、誰かに相談することも大切なコーピングの一つです。

たとえば、

「最近ちょっと疲れているんだ」

「どうしたらいいか分からなくて……」

「少し話を聞いてほしい」

と伝えてみることです。

話をすることで気持ちが整理されたり、自分では思いつかなかった方法を知ることができたりする場合があります。

一人で頑張ることだけが、ストレスへの対処ではありません。

人の力を借りることも、自分を守るための方法です。

相談することについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

→ 人に相談することは大切?助けを求める心理

5.その場から離れる

ストレスを感じる場面から、いったん距離を置くことが役立つ場合もあります。

たとえば、

「今は冷静に話せないから、少し時間を置こう」

「今日はもう疲れているから、続きは明日にしよう」

と考えることです。

その場から離れることは、必ずしも問題から逃げることではありません。

状況によっては、距離を置くことで自分を守れたり、落ち着いて考え直せたりすることがあります。

もちろん、問題によっては、後から改めて向き合う必要もあるでしょう。

大切なのは、無理に耐え続けることだけを選択肢にしないことです。

自分に合ったコーピングを考える

ここまで紹介したように、コーピングにはさまざまな方法があります。

では、どの方法を選べばよいのでしょうか。

一つの目安になるのは、「今の自分は何に困っているのだろう?」と考えてみることです。

たとえば、

疲れているとき

まず休息をとることが必要かもしれません。

問題が整理できないとき

紙に書き出したり、誰かに相談したりすることが役立つかもしれません。

怒りが強くなっているとき

いったんその場から離れて、落ち着く時間をつくることが選択肢になります。

不安を一人で抱えるのがつらいとき

信頼できる人に話してみることも考えられます。

同じストレスでも、そのときの状態や状況によって、必要な対処は変わります。

そのため、「ストレスを感じたら必ずこの方法を使う」と決めるのではなく、いくつかの選択肢の中から、今の自分に合いそうな方法を考えてみましょう。

コーピングは、試しながら見つけていくもの

最初から「自分にはこの方法が一番合っている」と分かる人ばかりではありません。

実際に試してみて、

「これは少し楽になるな」

「今の自分にはあまり合わないな」

と気づくこともあります。

たとえば、気分転換に散歩をしてみても、疲れが強いときには、かえって負担になるかもしれません。一方、頭の中がいっぱいになっているときには、少し外を歩くことが気分転換になる場合もあります。

同じ方法でも、状況によって感じ方は変わります。

試してみたあとに、

  • 少し気持ちが楽になったか
  • 問題を整理できたか
  • 身体を休めることができたか
  • かえって負担にならなかったか

などを振り返ってみると、自分に合う方法を考える手がかりになります。

一度試して合わなかったとしても、それは失敗とは限りません。

「この方法は今の自分には合わなかった」と分かることも、自分を知るための大切な情報です。

自分の「コーピングの引き出し」を見つけてみよう

ストレスを感じたときに思い出せる対処法を、心の引き出しのように考えてみるのもよいでしょう。

たとえば、

  • 休む
  • 人に話す
  • 身体を動かす
  • 好きなことをする
  • 問題を整理する
  • 気持ちを書き出す
  • その場から少し離れる

などです。

すべてを一度に試す必要はありません。まずは、これまでに少し役立った方法を思い出してみるだけでも十分です。

次の質問を、紙やスマートフォンのメモに書いてみてもよいでしょう。

① ストレスを感じたとき、今まで何をしてきただろう?

友達に話した、音楽を聴いた、ゆっくり寝たなど、思いつくものを挙げてみます。

② その中で、少し楽になったものは何だろう?

気持ちが整理された、少し休めた、考えがまとまったなど、自分にとって役立ったことを振り返ります。

③ あまり役立たなかったものはあるだろうか?

考え続けて余計に疲れた、一人で抱え込んでしまったなども、今後の参考になります。

④ まだ試していない方法はあるだろうか?

できそうなものがあれば、一つだけ試してみてもよいでしょう。

こうして振り返ることで、自分がどんなときに何を必要としているのか、少しずつ見えてくるかもしれません。

コーピングがうまくいかないこともある

いろいろな方法を試しても、思うように楽にならないことはあります。

そんなとき、「自分のコーピングが下手だからだ」と考える必要はありません。

ストレスの原因が大きかったり、長く続いていたりすると、自分の工夫だけでは対応することが難しい場合もあります。

また、心身の不調が続いているときには、休息や気分転換だけでは十分でないこともあります。

そのような場合には、自分だけで何とかしようとせず、周囲の人や専門機関の力を借りることも考えてみてください。

コーピングは、何でも自分一人で解決するためのものではありません。

自分にできることを考えるのと同じように、自分だけでは難しいことに気づくことも大切です。

今日、ちょっと考えてみよう

最後に、今日の自分に問いかけてみませんか。

「私がストレスを感じたとき、少し楽になることは何だろう?」

すぐに思いつかなければ、「以前、少し気持ちが楽になったのは、どんなときだったかな?」と振り返ってみてもよいでしょう。

もし、できそうな方法が一つ見つかったら、試してみてください。

うまくいけば、自分のコーピングの引き出しに加えておく。

あまり合わなければ、別の方法を考えてみる。

どちらも、自分に合ったストレスとの付き合い方を知るための一歩です。

ストレスを感じない人になることだけを目指すのではなく、ストレスを感じたときに、どんな方法が自分の助けになるのかを考えてみる。

そんな小さな積み重ねも、心の健康を育てることにつながります。

まとめ

コーピングとは、ストレスに対して対処しようとすることです。

コーピングには、問題そのものに取り組む方法だけでなく、気持ちを整えること、気晴らしや休息をとること、誰かに相談すること、その場から離れることなど、さまざまな方法があります。

大切なのは、「これさえやれば大丈夫」という一つの方法を探すことではありません。

そのときの自分の状態に合わせて、

「今の自分には何が必要だろう?」

と考え、いくつかの方法を試してみることです。

合う方法もあれば、合わない方法もあります。試しながら、自分に合った選択肢を少しずつ見つけていきましょう。

自分なりのストレスとの付き合い方を知っていくことも、心の健康を育てる一つの方法です。